「星や神話とデザインの関係」
ミラノの中心街の一画であるブレラ地区。この芸術ゾーンの核になっている建物がパラッツォ・ディ・ブレラで、有名な美術学校や絵画館を納めています。あまり知られていませんが、実はこのパラッツォ・ディ・ブレラには天文台も所属しています。
ルネサンス後、近世に入って大きく飛躍したヨーロッパの天文学において、イタリアはその発展に大きな役割を果たしています。オランダで発明された望遠鏡を初めて宇宙に向けたのはガリレオ・ガリレイでした。自ら製作した高性能な望遠鏡を用い天体を観測したガリレイは、1610年に木星(ユピテル)の四大衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストを発見したほか、金星(ヴェヌス)の満ち欠けや月(ルナ)の表面の凹凸などの発見をしており、これらの証拠をもとに地動説を主張しました。またシチリアはパレルモ 天文台のジュゼッペ・ピアッツィは1801年の元旦に小惑星ケレス(現在準惑星に定義される)を発見しています。火星と木星の間には小惑星と呼ばれる小さな天体が無数に存在していて、軌道が確定しているものだけでも13万個を超えます。その中でケレスは最も大きく最初に発見された小惑星です。
1764年に設立されたブレラの天文台も星々の観測で優れた成果をあげ、ミラノ天文台として名を知られてきました。その歴史の中で特に重要なのは火星(マルス)の観測です。ブレラ天文台長だったジョヴァンニ・ヴィルジニオ・スキアパレッリは、火星表面の複雑な筋模様を観測して1877年に発表しました。 このときイタリア語で溝という意味のカナーリと呼んだ筋模様が、仏語や英語に翻訳された際に運河を意味するカナルと誤訳されたため、火星には運河を建設するほどの文明が存在するという憶測を生み、アメリカが探査機を送りこむ1970年代まで、100年ちかくも火星人の存在が実しやかに囁かれることとなったのです。
人類は歴史の中で、手の届かない天空を神の世界と考え、夜空に輝く星たちに神の姿を見出していました。上に述べた惑星や衛星の名前は、全てローマ神話に登場する神々の名前なのです。ローマ神話はギリシア神話と関係が深く、ローマ文化がギリシアの影響を受けて発展していく中で融合し、それぞれの逸話や伝説を共有するかたちになりました。人々はそれらの物語と天の星の運行を結びつけて考え、神の世界の法則を理解していたのです。例えば…海神ポセイドン(ローマ神話のネプトゥヌス)の息子オリオンは大地の女神ガイア(ローマ神話のテルス)の怒りをかい、彼女の放ったサソリに刺されて死んだ。其れゆえオリオン座はサソリ座が沈むまで姿を現さず、またサソリ座が現れると恐れをなしたかのように沈んでしまう…と言った具合です。
ちなみにオリオンの死については他にも諸説あり、もっとも有名なのがアルテミス(ローマ神話の月神ディアナ)との恋物語です。月と狩猟の神であるアルテミスは、腕のたつ狩人であったオリオンと出会って間もなく恋に落ち、結婚の約束もしていた。しかし彼女の双子の兄アポロン(ローマ神話の太陽神アポッロ)は妹の処女性を守るために一策を講じ、アルテミスにこう言った。「弓の達人のお前でも、遠くに光るあの的を射ぬくのは無理だろう」。日に照らされて彼方で光っているのものが、海の中を歩くオリオンの水面から出した頭であるとは知らないアルテミスは、兄の挑発に乗せられ弓を引きそれを射ち当てた。数日して恋人を自ら殺してしまった事を知ったアルテミスは嘆き悲しみ、父であるゼウス(ローマ神話の天空神ユピテル)に頼んで、オリオンを空に上げて星座にしてもらった。彼女が銀の車で夜空を渡るとき、オリオンの姿を見られるように…。夜に月が昇るのは、アルテミスがオリオンに会うために、今夜も銀の車(月)で散歩に出かけるからなのです。
アルテミスのイタリア語名がアルテミデ。
有名な照明器具メーカー「Artemide」の名前は、闇夜を明るく照らす月神の名前から取られています。
1931年サン・レモ生まれのエルネスト・ジスモンディは、ミラノとローマで 航空工学を修めた後、1959年に若い建築家セルジョ・マッツァと共にアルテミデ社を創立しました。熱硬化性ポリエステルのFRPによる家具からまり、当初はプラスチックを主材料に照明器具と家具を半々の割合で製造していましたが、‘60年代イタリア・モダン・デザインの盛り上がりの中で彼等の革新的な照明器具は世界の注目を浴び、イタリアを代表する照明器具メーカーに成長しました。
‘60年代はモダニズムの全盛期で、二重の半球で調光するヴィコ・マジストレッティの「エクリッセ」、曲面の造形がいかにもモダン・デザインのジャンカルロ・マッティオーリによる「ネッソ」などの名作が発表されています。ちなみにエクリッセとは太陽や月など天体の蝕の意です。ネッソはギリシア神話のケンタウロス(半人半馬の生物)であるネッソスのイタリア語名で、土星と冥王星の間を巡る小惑星の名前にもなっています。
トーヨーキッチンがリスペクトするデザイナー、エットーレ・ソットサスも神話や民族的な宗教観のなかにこそ普遍的な美しさが存在すると考えています。現在六本木の「トーヨーキッチンスタイル meuble」にあるBharata (バーラタ)シリーズの家具を紹介します。
ちなみに、このシリーズの展示は、世界中で「トーヨーキッチンスタイル meuble」だけです。
Mobile giallo & 4Gopuram < Bharata>
モービレジャッロ、クワトロゴープラムは 1988年のBharataシリーズの家具です。
Bharata(バーラタ)とは、インド舞踊バーラタから命名されたシリーズで、ソットサスがメンフィス解散後、インド文化に傾倒した頃の作品群です。インド寺院建築の様式引用、独特の色彩バランスなどメンフィスのコンスプトを独自の世界観のもと発展させています。モービレジャッロではハンドルを異様なまでに大きくし、さらには金箔を施し目立たせることでシンメトリーを強調、コンパクトにまとめられた姿は日本の仏壇にも通ずる精神性を感じるのは私だけではないでしょう。またクワトロゴープラムでは4つの寺院建築(ゴープラム)によって支えられた天板は供物を神にささげる神聖な場所に映ります。天板とそれを支える脚が、寺院と聖域に見えてくるこのテーブルは、生活の中に潜む神性を思い出させてくれます。


六本木の「トーヨーキッチンスタイルmeuble」で展示しております。
是非ご覧く ださい。
トーヨーキッチンスタイルmeuble
東京都港区六本木 5-17-1 AXISビルB1F
03-3585-1040
水 曜定休
ムーブルのブログ公開中です!
http://blog.toyokitchen.co.jp/meuble/
投稿者 tks : 2007年08月31日 17:45
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