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Lingotto
2006年 04月 6日
フィアット多層式工場リンゴット

前回に引き続き、オリンピックで湧いたトリノのお話です。 イタリアで人に知り合うと必ず出生地を聞かれます。私が広島出身であると言うと複雑な表情を見せ(知ってる名前で嬉しい反面、原爆の惨劇で有名なので素直に喜んでいいのかどうか分からないらしい)、そして「そこには何人住んでいるの?」と来るのがおきまりのパターンです。街の大きさを推し測るのに人口の数を使うのが通例なのです。日本では自分の街の人口など訊ねられたことが無く、困って「数えたことがないから知らない」などと言っても納得してもらえません。そこで「だいたいトリノくらいの街」と言うと、やっと理解してもらえます。広島の規模、自動車メーカー(マツダ)を核とした工業都市形態、中国地方の中心都市などの面が、トリノの特徴と共通していて説明し易いのです。

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ピエモンテ州の州都トリノはミラノ近郊に次ぐイタリア第2の工業都市で、特に自動車メーカー“フィアット”の街として知られています。事実フィアット(FIAT)とはトリノ・イタリア自動車製造会社(Fabbrica Italiana Automobili Torino)の頭文字です。1899年に創立したフィアットは米フォードの大量生産方式を研究してイタリアに取り入れようとしました。土地の広いアメリカに対し、大きな工場を建てられるほど広大な敷地のないイタリアにおいてフィアットは1922年、新工場“リンゴット”の建設により問題を解決しました。ジャコモ・マッテ・トゥルッコ設計によるリンゴットは5階建ての工場で、下階から上階に上りながら順に車を組み立てていき、最後に出来上がった車両を屋上のテストコースで試験走行するというものです。卓越したアイデアに基づくこの工場は、生産工程を形態に反映した合理的な建築として、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジェにより賛美されました。実質的な役割を終え1982年に閉鎖されましたが、見本市会場やホテル、ショッピングセンターなどとして利用されることとなり、関西国際空港の設計などで有名なレンツォ・ピアノが再開発を担当しています。

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リンゴットが閉鎖されたその年に発売になったのが“フィアット・ウーノ”です。当時経営不振にあえいでいたフィアットは、このモデルの大ヒットにより勢いを取り戻しました。ウーノのデザインは前回紹介したG・ジュジャーロが外装を、ロドルフォ・ボネットが内装を担当しました。

ミラノ出身のロドルフォ・ボネット(1929-1991)は、ピニンファリーナ等でカーデザインに従事した後、‘58年に自身のデザイン事務所を設立、家具・自動車・家電製品・大型工作機などを手掛けました。‘62年に発表した目覚まし時計“スフェリクロック”をはじめ、6つのコンパッソ・ドーロ賞を受賞しています。4つのパーツを自由に組合わせて使えるテーブル“4/4”やポータブルTV“リネア1”など、‘60から‘70年代に盛り上がっていたイタリア・モダンの時代を牽引する魅力的な製品を次々とデザインしました。彼はその華やかなキャリアの中でも常に謙虚な姿勢でデザインと研究に立ち向かっており、“製品が売れればそれは販売者のおかげで、売れなければデザイナーの責任だ”と言い切っています。デザイナーの名前が製品の冠になり、次々と大量の新製品が発表される今日において、この言葉はとても重要な意味を持っているように思います。

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ミラノはイタリア半島の付け根に位置し、イタリア中部に興ったルネッサンスからの芸術文化と、ドイツからの工業技術がぶつかり合う立地条件のもと、両者の融合した成果である工業デザインが大いに発展しました。一方アルプスに隣接するトリノでは山の傾斜を利用した水力発電が発達し、それにより工業が栄え、それらの製品に必要なものとしてデザインが盛んになっていったのです。そのためミラノのデザインが情緒性の高い感覚的な面白さや美しさを重視しているのに対し、トリノのデザインは工業製品としての合理的な形態を厳格に美しく表現する手法で発展させてきました。 同じ国のデザインにおいても、それらの特徴が立地条件の違いから生まれているというのは興味深いことです。人と知り合ったときに出身地を訊ねるというのは、相手のひととなりを知る上でとても有効な質問かもしれません。

今回ご紹介したフィアットの革新的な工場『リンゴット』、限られた土地を立体的に捉え多層階にすることで有効面積を増やすという発想。トーヨーキッチンもこの考えと同じく、限られたワークスペースを立体的、多層階に考えて革新的なシンクをご提供しています。それはご存知「3Dシンク」に代表される多層シンクです。

投稿者 tks : 2006年04月06日 17:25

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